お知らせ

第16回(2021年度)凝縮系科学賞 募集

  1. 対象
     物理・化学・材料科学にわたる、広い意味での凝縮系科学の研究に従事する若い研究者(2021年12月末日現在、博士学位取得後10年以内の者)。原則として実験系・理論系各1名(該当者が無い場合には見送ることがあります)。受賞者の専門分野については受賞者のページを参照ください。
  2. 審査方針
     推薦書・自薦書、研究業績概要および論文の内容を専門の近い複数の委員が精査し、場合によっては委員会以外の専門家の助言を得て、審査員全員で審査を行います。審査項目は、研究業績の分野における位置づけ、方法論の新しさ・的確さ、研究内容の質の高さ、波及効果などで、これらが推薦書および論文中に客観的かつ公正に表現されていることを重視します。
     このことから、提出論文は上記の項目が判断できる文献が望ましく、レター論文の場合にも対応する本論文の添付が望ましいと考えます。また、分野の状況と候補者の研究業績の位置づけに関する記述がある解説記事(著者任意)を補足資料として添付することは可能です。
     なお、当該年度に応募された候補者は、学位取得後の年限内であれば翌年度の候補者として考慮されます。
  3. 賞の内容
    賞状、盾および賞金20万円
  4. 選考委員
    永長直人 (委員長)
    秋光 純
    小野輝男
    陰山 洋
    小林研介
    柴山充弘
    谷村吉隆
    塚崎 敦
    常行真司
    寺崎一郎
    播磨尚朝
    福山秀敏
    山本浩史
  5. 推薦方法
     自薦または他薦。以下の書類をメールで送付。書式は自由。添付書類の総量は10MB以下にしてください。メールの件名は「第16回凝縮系科学賞」として下さい。3 日以内に受領確認のメールを返信しますので、届かない場合には必ずご連絡ください。
      (1) 略歴
      (2) 全業績リスト
      (3) 研究業績概要 A4用紙2枚以内
      (4) 主要論文別刷(3編以内)
      (5) 他薦の場合には推薦書
  6. 推薦期限 2021年9月3日(金)17時 必着
  7. 受賞発表
    受賞者は、本Webサイトおよび授賞式にて発表されます。
    授賞式 2021年11月27日(土)
  8. 提出先および問合先
    [凝縮系科学賞事務局]
    東京大学大学院理学系研究科 小林研介
    Email: kensuke[at]phys.s.u-tokyo.ac.jp

第15回凝縮系科学賞 表彰式・記念講演

 第15回(2020年)凝縮系科学賞受賞者は、実験部門で田家慎太郎氏(京都大学理学研究科)が、理論部門で那須譲治氏(横浜国立大学大学院工学研究院)が選考されました。授賞対象となった研究は、田家氏が「イッテルビウム冷却原子を用いた凝縮系物理の量子シミュレーション」、那須氏が「Kitaev量子スピン液体の熱力学的性質とそのダイナミクスに関する理論的研究」です。

 2020年12月4日(金)、第14回物性科学領域横断研究会 (領域合同研究会) (オンライン開催) の中で第15回凝縮系科学賞 表彰式・記念講演が行われ、秋光純同賞運営委員長と福山秀敏先生から賞状その他が贈られました。
 心よりお祝いを申し上げます。

田家慎太郎氏
那須譲治氏

 授賞理由を以下にご紹介いたします。


田家慎太郎氏 
 量子シミュレーションとは、物質中で起きる複雑な量子現象を、人工的に用意した制御性の高い系を用いて模倣し、新たな理解を目指す研究手法のことです。この手法を用いることによって、ハバード・モデルのような現実的なサイズでの計算が難しい系の振る舞いを、様々なパラメータを制御しながら詳細に調べることが可能になると期待されています。
 田家慎太郎氏は、イッテルビウム冷却原子を用いて、スピンと軌道の自由度に着目した独自の量子シミュレーション研究を展開してきました。まず、同氏は、SU(6)という高い対称性をもつイッテルビウム冷却原子を光格子に導入し、2重占拠数を評価することでモット絶縁体の形成を示唆する励起スペクトルのギャップを観測しました。また、この現象には、フェルミ原子の持つスピン自由度が本質的な役割を果たすポメランチュク冷却機構がSU(2)に比べてSU(6)で増強されていることが重要な寄与を果たしてしていることを示しました。同氏はまた、複数の光格子を組み合わせることによってリープ格子を設計し、phase imprinting 法を用いて平坦バンドへのボーズ粒子の励起を行うことによって、リープ格子のタイトバインディング模型と矛盾しないバンド占拠数の時間依存性を観測しました。さらに、リープ格子の持つ平坦バンドの特性を活かして、粒子が中間地点を経由せずに空間的に離れた地点間を移動する空間断熱移送という量子現象の実現に成功しました。
 これらの成果は、同氏ならではの独創的な視点と高度な技術力によって、難易度の高い実験を成し遂げることによって初めて得られたものです。同氏の開発した種々の技術と得られた成果は、今後の量子シミュレーション研究に資する波及効果の高いものであり、凝縮系科学賞に相応しい業績です。


那須譲治氏 
 量子スピン液体は強いスピン間相互作用にもかかわらず極低温まで磁気秩序を示さないスピン系の状態としてP. W. Andersonが1973年に提案しました。その状態の理論的究明および候補物質の実験的探求が「凝縮系科学」の重要課題として広範に展開されてきたが、問題の難しさから明確な理解には未だ到達していません。
 これまでの理論的研究では幾何学的フラストレーションを持つ格子上でのハイゼンベルグ模型およびハバード模型が主たる対象でした。その中で2006年Kitaevが提案した蜂の巣格子上で結合方向に依存したイジング相互作用を持つ模型が、スピン演算子をマヨナラ粒子およびZ2ゲージ場を用いて表現することにより量子スピン液体が基底状態となることが厳密に示され、大きな転機となりました。一方、実験結果との比較に必要となる有限温度での比熱・磁化率等の物性値の理論予測が計算の難しさから長い間実現しませんでした。その状況の中で受賞者らは新しい数値計算方法を開発し、比熱やエントロピー、輸送係数、核磁気緩和率、動的スピン構造因子等の様々な物理量について統計誤差を除いて近似なしの数値計算に成功しました。その結果量子スピンが2種類のマヨナラフェルミオン準粒子に分裂したかのようにふるまう「分数化現象」が最も基礎的な熱力学量である比熱の温度依存性における2つのピークで明確に示されました。またキタエフ候補物質α-RuCl3でのラマン散乱強度の温度変化が2種類のマヨナラ粒子のフェルミ分布を反映したエネルギー拡がりとして理解できることがわかり、ここに理論と実験結果の具体的な比較の端緒が生まれました。その後α-RuCl3における中性子非弾性散乱スペクトルの温度変化や動的スピン構造因子の実験結果についても理論的な理解がなされています。さらに、マヨナラ粒子存在のより直接的な証拠となる分数量子化の確認に向けて、実験研究を刺激しています。
 以上、那須氏の業績は量子スピン液体の理論研究において、実験による検証が可能となる高い精度を持つ有限温度物性値を初めて提示することにより当該分野の研究に新展開をもたらし、凝縮系科学賞にふさわしいものです。


第15回(2020年度)凝縮系科学賞 募集

  1. 対象
     物理・化学・材料科学にわたる、広い意味での凝縮系科学の研究に従事する若い研究者(2020年12月末日現在、博士学位取得後10年以内の者)。原則として実験系・理論系各1名(該当者が無い場合には見送ることがあります)。受賞者の専門分野については受賞者のページを参照ください。

  2. 審査方針
     推薦書・自薦書、研究業績概要および論文の内容を専門の近い複数の委員が精査し、場合によっては委員会以外の専門家の助言を得て、審査員全員で審査を行います。審査項目は、研究業績の分野における位置づけ、方法論の新しさ・的確さ、研究内容の質の高さ、波及効果などで、これらが推薦書および論文中に客観的かつ公正に表現されていることを重視します。
     このことから、提出論文は上記の項目が判断できる文献が望ましく、レター論文の場合にも対応する本論文の添付が望ましいと考えます。また、分野の状況と候補者の研究業績の位置づけに関する記述がある解説記事(著者任意)を補足資料として添付することは可能です。
     なお、当該年度に応募された候補者は、学位取得後の年限内であれば翌年度の候補者として考慮されます。

  3. 賞の内容
    賞状、盾および賞金20万円

  4. 選考委員
    永長直人 (委員長)
    秋光 純
    小野輝男
    陰山 洋
    小林研介
    柴山充弘
    谷村吉隆
    塚崎 敦
    常行真司
    寺崎一郎
    播磨尚朝
    福山秀敏
    山本浩史

  5. 推薦方法
     自薦または他薦。以下の書類をメールで送付。書式は自由。添付書類の総量は10MB以下にしてください。メールの件名は「第15回凝縮系科学賞」として下さい。3 日以内に受領確認のメールを返信しますので、届かない場合には必ずご連絡ください。
      (1) 略歴
      (2) 全業績リスト
      (3) 研究業績概要 A4用紙2枚以内
      (4) 主要論文別刷(3編以内)
      (5) 他薦の場合には推薦書

  6. 推薦期限 2020年9月25日(金)17時

  7. 受賞発表
    受賞者は、本Webサイトおよび授賞式にて発表されます。
    授賞式
     日時:2020年12月4日

  8. 提出先および問合先
    [凝縮系科学賞事務局]
    東京大学大学院理学系研究科 小林研介
    Email: kensuke[at]phys.s.u-tokyo.ac.jp

第14回凝縮系科学賞 表彰式

14回(2019年)受賞者は、実験部門で橘高俊一郎氏(東京大学物性研究所)が、理論部門で水野英如氏(東京大学大学院総合文化研究科)が選考されました。授賞対象となった研究は、橘高氏が「極低温精密比熱測定による超伝導ギャップ構造の決定」、水野氏が「ガラスの力学特性における階層構造の理論的解明」です。

2019年11月27日、東京大学本郷キャンパス小柴ホールで表彰式が行われ、秋光純同賞運営委員長から賞状その他が贈られました。

科学新聞で報道されました(リンク)。

橘高氏(左)と水野氏(右)(2019年11月27日)

授賞理由を以下にご紹介いたします。


1979年以来、従来のBCS理論の枠組みを超えた非従来型超伝導が数多く発見されており、それらの超伝導発現機構の解明は物性物理学の重要課題です。非従来型の超伝導ギャップは多くの場合、特定の波数方向でゼロになる「ノード」を持ち超伝導ギャップに構造があります。その構造が超伝導発現機構を解明する鍵となりますが、超伝導ギャップ構造を実験的に決めるのは容易ではありません。

橘高氏は、超小型温度計の導入や外部ノイズ対策など装置に数々の改良を加え、0.06 K以下の極低温まで比熱の磁場角度依存性を高精度に測定できる世界最高水準の装置を完成させ、これを用いて非従来型超伝導体のギャップ構造を次々と解明し、これらの超伝導の理解を大きく深化させました。中でも、異方的d波超伝導であると長年考えられてきた重い電子系超伝導体CeCu2Si2(Tc = 0.6 K)において極低温までの磁場中比熱の精密測定を行い、小さいフルギャップが存在している事を発見したことには大きな意義があります。重い電子系においてフルギャップのs波超伝導が実現しているとすれば、これまでの常識を覆すこととなり、多くの研究者に強烈なインパクトを与えることになります。さらに、p波超伝導体と考えられているSr2RuO4では、超伝導ギャップが水平ラインノードを持ち、p波とは矛盾することをNMR実験に先立ち指摘しました。

これらの成果は、非従来型超伝導体の研究に大きな進展をもたらしたばかりでなく、極低温精密測定から得られる知見の新しい可能性を示したことからも、凝縮系科学賞に相応しい業績です。


ガラスの力学的性質は結晶のそれに比べて複雑であり、振動モードに限ってもその物理的描像の全貌は明らかではありません。力学的特性を反映する弾性・音波物性は比熱や熱伝導度という物理量として観測にかかりますが、その理論的解明は大変重要なテーマです。

水野氏はこの課題に大規模な分子動力学計算を用いてアプローチし、ガラスが (i) ミクロスケールでは分子が不規則に配置する構造体であり、 (ii) メソスケールでは弾性率が空間中を不均一に分布する弾性体、そして (iii) マクロスケールでは欠陥がある弾性体として振る舞う階層構造を持つことを明らかにし、「弾性不均一性」という概念を提出しました。(ii)のメソスケールでは弾性率の空間分布を解析し、局所弾性率の確率分布関数から不規則性を定量的に評価することに成功しました。(iii)のマクロスケールでは結晶と同様にガラスにも弾性波が存在するが、それに加えて「局在モード」が存在することを明らかにしました。そして局在モードが散乱体として働き、ガラス中を伝搬する音波をレイリー散乱則に従って散乱させることを示しました。

これらの成果は、ガラスの物理学において大きな進展をもたらした凝縮系科学賞に相応しい業績です。

第14回(2019年度)凝縮系科学賞 募集

  1. 対象
     物理・化学・材料科学にわたる、広い意味での凝縮系科学の研究に従事する若い研究者(2019年12月末日現在、博士学位取得後10年以内の者)。原則として実験系・理論系各1名(該当者が無い場合には見送ることがあります)。受賞者の専門分野については受賞者のページを参照ください。
  2. 審査方針
     推薦書・自薦書、研究業績概要および論文の内容を専門の近い複数の委員が精査し、場合によっては委員会以外の専門家の助言を得て、審査員全員で審査を行います。審査項目は、研究業績の分野における位置づけ、方法論の新しさ・的確さ、研究内容の質の高さ、波及効果などで、これらが推薦書および論文中に客観的かつ公正に表現されていることを重視します。
     このことから、提出論文は上記の項目が判断できる文献が望ましく、レター論文の場合にも対応する本論文の添付が望ましいと考えます。また、分野の状況と候補者の研究業績の位置づけに関する記述がある解説記事(著者任意)を補足資料として添付することは可能です。
     なお、当該年度に応募された候補者は、学位取得後の年限内であれば翌年度の候補者として考慮されます。
  3. 賞の内容
    賞状、盾および賞金20万円
  4. 選考委員
    永長直人(委員長)
    秋光 純
    小野輝男
    陰山 洋
    小林研介
    柴山充弘
    谷村吉隆
    塚崎 敦
    常行真司
    寺崎一郎
    播磨尚朝
    福山秀敏
    山本浩史
  5. 推薦方法
     自薦または他薦。以下の書類をemailで送付。書式は自由。電子メールの総量は10MB以下にしてください。
      (1) 略歴
      (2) 全業績リスト
      (3) 研究業績概要 A4用紙2枚以内
      (4) 主要論文別刷(3編以内)
      (5) 他薦の場合には推薦書
  6. 推薦期限 2019年9月27日(金)17時
  7. 受賞発表
    受賞者は、本Webサイトおよび授賞式にて発表されます。
    授賞式
     日時:2019年11月27日
     場所:東京大学
  8. 提出先および問合先
    名古屋大学理学研究科物理学教室 寺崎一郎
    Email: terra[at]nagoya-u.jp
    電話: 052-789-5255

第13回凝縮系科学賞 受賞者決定

第13回受賞者は実験部門で水口佳一氏(首都大学東京理学研究科)が、理論部門で川崎猛史氏(名古屋大学理学研究科)が選考されました。表彰式は2018年11月30日に奈良先端科学技術大学院大学で行われ、永長直人同賞選考委員長から賞状その他が贈られました。

物質科学の魅力の一つは新物質の発見にあります。高温超伝導を示す銅酸化物と鉄砒化物の発見はその最たる例といえるでしょう。これらの高温超伝導体は伝導を担う銅-酸素層および鉄-砒素層が他の物質層(ブロック層)と交互に積層した構造を形成しており、超伝導を含む豊かな物理現象が提供されました。

水口佳一氏は、ビスマスと硫黄の層をもつ臨界温度Tcが6 Kの新超伝導体を発見しました。次いで、層間に別の層を挟むことでTcを10.6 Kまで引き上げました。これらの発見により、層状ビスマス硫化物が新たな超伝導物質群となることがわかり、その後の世界中での 活発な研究が行われ、多様なブロック層からなる新物質が開発されました。d電子をもたないビスマスが超伝導の主役になったことで既存の遷移金属にはない新たな展開が見られています。同氏は、ビスマスの6s電子の影響を精密な構造解析により明らかにし、混沌としていた超伝導相の合成条件に決着をつけました。

これらの水口氏の研究成果は物質の持つ可能性について今までにない視点を提示するものであり、凝縮系科学賞に相応しい業績です。

非平衡ソフトマター物理学は、化学・生物学との境界領域にある凝縮系物理学の一大分野 であり、身の周りにあるあらゆるものが研究対象といっても過言ではありません。そこでは、過冷却液体あるいは過圧縮液体において観測されるガラス転移や結晶化など広い意味での相転移現象や、それらと流動に関する外場応答との関係などが中心的な課題ですが、非平衡性や非線形性のために解析が難しい問題とされてきました。

川崎氏は、これらの諸問題に対し非平衡性や非線形性を直接的に扱うことの出来る分子動力学法を始めとする大規模な数値計算を駆使し、過冷却液体における局所構造を発見し結晶核生成過程における前駆体の存在を明らかにしました。これらの研究は、均一であることを前提としてきたガラス転移現象に対する従来からの考え方や古典核生成理論を一新するものです。さらに、単純液体において普遍法則として知られているStokes-Einstein則が過冷却液体では破れるという異常輸送現象について、空間不均一な粒子の構造緩和の階層性に注目することにより、その物理的起源の解明をおこないました。

これらの成果は、非平衡ソフトマター物理学における金字塔であり、凝縮系科学賞に相応しい業績です。