第3回受賞者(2008年度)

神原 陽一 氏(科学技術振興機構TRIP 研究員)
「鉄系高温超伝導体の発見」
古賀 昌久 氏(京都大学理学研究科)
「直交ダイマースピンおよび多軌道モット転移の理論的研究」

第3回受賞者は実験部門で神原陽一氏(科学技術振興機構TRIP研究員)、理論部門で古賀昌久氏(京都大学理学研究科)が選考されました。表彰式は2008年11月30日に東京大学武田ホールで行われ、北岡良雄同賞選考委員長から賞状その他が贈られました。

神原氏には、「鉄系高温超伝導体の発見」に対して同賞が授与されました。神原氏は、鉄を含むオキシニクタイド化合物で最大32 Kの転移温度を持つ新系統の高温超伝導物質を発見しました。鉄を含む化合物でこれほど高い転移温度を示したものはなく、新しいタイプの高温超伝導物質であると考えられています。今年の2月にLaFeAsO1-xFxにおける超伝導を発見して以来、世界では各サイトの元素置換やドーピング効果による超伝導特性の報告がなされるなど、研究は急激な進展を見せています。新物質探索や伝導機構解明等の研究が世界中で繰り広げられており、インパクトの大きな成果であり、凝縮系科学賞に値する価値ある研究業績です。

古賀氏には、「直交ダイマースピンおよび多軌道モット転移の理論的研究」に対して同賞が授与されました。強相関電子系が示す多彩な電子相は今日の物性物理学の中心的テーマですが、その中でもフラストレーションや他自由度の役割が本質的に重要であることが認識されるようになっています。古賀氏はこの問題に対して、信頼性の高い理論的解析を行い、先駆的な研究を行ないました。特に、(1) 幾何学的フラストレーションを含む量子スピン系SrCu2(BO3)2を記述するモデルで新しいスピンギャップ相を見出したこと、(2) 多軌道モット転移を記述する模型でフント結合が存在する場合には、軌道選択的にモット転移が起こることを示しました。今後、この軌道依存した電子相関効果という概念はその重要性を増すと考えられ、凝縮系科学分野で先駆的な業績あり、高く評価されます。