第4回受賞者(2009年度)

千葉 大地 氏(京都大学化学研究所)
「強磁性半導体の電界効果に関する研究」
桂 法称 氏(JSPS海外研究員)
「磁性強誘電体の理論的研究」

第4回受賞者は実験部門で千葉大地氏(京都大学化学研究所)、理論部門で桂法称氏(JSPS海外研究員)が選考されました。表彰式は2009年11月29日に東京大学武田ホールで行われ、北岡良雄同賞選考委員長から賞状その他が贈られました。

千葉氏は、「強磁性半導体の電界効果に関する研究」に対して同賞が授与されました。千葉氏は、強磁性半導体薄膜の物性とデバイス構造に関する研究を進め、強磁性の電界制御という新しい分野を切り開きました。強磁性半導体薄膜の電界によるキャリア濃度変調により、強磁性転移温度や保磁力の制御、さらに磁気異方性を変化させて外部磁場やスピンカレントを用いずに磁化方向を操ることに成功しています。今日の情報通信を支えるエレクトロニクスは半導体と磁性体の機能を別々に用いていますが、同氏の研究はこの両者を融合した、まさに新機能のスピントロニクスデバイスを実現するための先駆け的な成果であり、凝縮系科学賞に値する価値ある研究業績です。

桂氏は、「磁性強誘電体の理論的研究」に対して同賞が授与されました。桂氏は、スピン・軌道相互作用の関係した電気・磁気効果に起因する磁性強誘電体、および磁気構造と輸送現象の関係についての理論的研究で顕著な成果を挙げました。近年大きな注目を集めているマルチフェロイックス物質群の物性を微視的な立場から理解しようとする挑戦を行ない、その結果、「非共線磁気構造(特に螺旋構造)におけるスピン流が電気分極を作り出す」という新しい物理的機構を世界で最初に提唱しました。この理論が提出された後に、実験によって数々の物質群で桂氏らが提唱した機構が働いていることが実証されるに至り、今日ではマルチフェロイック研究の古典的な文献と目されるまでになっていることからも、凝縮系科学分野での先駆的な業績であると高く評価されます。