第6回受賞者(2011年度)

北川 健太郎 氏(東京大学物性研究所)
「NMR用超高圧セルの開発と物性研究への応用」

第6回受賞者は実験部門で北川健太郎氏(東京大学物性研究所)が選考されました。今回は理論部門は該当者なしとして受賞は見送られました。表彰式は2011年11月19日に東北大学金属材料研究所2号館1階講堂で行われ、北岡良雄同賞選考委員長から賞状その他が贈られました。

北川氏は、方位制御のための2軸回転が可能なコンパクトなサイズを持ちながら、10 GPa級の超高圧が発生可能で、7 mm3という従来のものに比べて、一桁近く大きな試料体積を持つこれまでに類のないデザインと性能を持つ画期的な圧力セルの開発に成功しました。その結果、超高圧下NMR測定を鉄ニクタイド化合物単結晶SrFe2As2に適用し、元素置換による不純物効果の影響を受けない圧力誘起超伝導状態は、これまでに例のない構造転移も関係した磁性と超伝導の共存状態であることを発見しました。今回、開発に成功した画期的な超高圧セルは、高圧の専門家からも注目され、例えばJ-PARCで開発中の高圧下中性子回折実験装置、高圧下光学測定などにも役立っています。この技術開発は、物性科学のフロンティアを切り拓くことが期待でき、凝縮系科学賞に値する研究業績です。